卓越した教育の実現に関する事業
かがやく博士人材奨励奨学金
本学の目指す「科学を基盤に人の価値を知的に社会的に最大に高める世界第一線の研究大学」を実現するために、かがやく博士人材にふさわしい優れた博士課程の学生に奨学金を支給しました。
※学生の所属・学年は支給時のものです。
生物システム応用科学府 共同先進健康科学専攻 1年 菅崎 萌
この度は、奨学金のご支援をいただきまして誠に感謝しております。
私は祖母が癌に罹患したことをきっかけに、癌の治療法の開発に興味を抱きました。現在は生物システム応用科学府共同先進健康科学専攻で前立腺癌の骨転移について研究しており、前立腺癌の骨転移を防ぐことができるような医薬品の有効成分を模索しています。博士課程進学を目指す際、家計に余裕がなく、進学が難しい状況でしたが、奨学金のご支援のおかげで学会参加、実験書の購入などができ、集中して研究に励むことができています。特に学会発表ではさまざまな発表やポスターセッションを拝見させていただき、見聞を広げることができました。研究成果はBiochemical andBiophysical Research Communications 誌に投稿するに至り、大変充実した研究生活を送らせていただいております。
今後も立派な研究者になることを目指して勉学に励むことはもちろん、周りの方々を大切にし、社会に貢献できる人になれるよう、一層努力してまいります。
ご支援をいただきました全ての方々に心より御礼申し上げます
連合農学研究科 生物生産科学専攻 2年 辻 暖永
まず、本年度かがやく博士人材奨励奨学金に採択いただき誠に感謝いたします。私は現在、不妊治療専門の医療機関にて“胚培養士”という技術者をしながら、社会人学生として本学で研究をさせていただいています。胚培養士という職は学会発表や論文執筆も場合によっては行う職で、私も胚培養士の仕事の傍ら、研究活動を実施しておりました。そのような生活の中、もう一度ちゃんと研究をしたい、そして博士号を取得したいと考えるようになり、上司からの後押しもあり、入学することができました。
しかし、医療の現場で働きながら大学で研究するのは思ったよりも大変でした。一つは時間の捻出です。これは自分の時間を削ることで何とか捻出するしかありません。もう一つは授業料、通学や種々の学習にかかる諸費用の捻出です。特に私の職場は、進学に対して職場からの援助がなかったので、すべて自費で賄うしかありませんでした。普段の生活費+αでこれらの費用を賄うことには非常に苦渋しました。そんな時、見つけたのが“かがやく博士人材奨励奨学金”でした。多くの奨学金は経済的に困窮している学生に対するものが多く、私のような社会人として一定の給与が得られている者は対象外であると感じていました。しかし、この“かがやく博士人材奨励奨学金”は起業や知的財産の取得を応援するという他とは一線を画す奨学金であり、起業にも知的財産の取得にも興味があった私にはピッタリな奨学金だと感じ、迷わず応募させていただきました。
入学初年度は授業料の支払いや起業に関わる書籍の購入をするたびに妻に申し訳なく感じていましたが、本奨学金が得られた本年度に関しては、お金のことで妻にも気を使うこともなく、研究に集中することができました。その結果、研究も進捗し、将来的な知的財産の取得にも一歩前進しました。
改めまして、この度かがやく博士人材奨励奨学金に採択しただきありがとうございました。また本奨学金の原資となります寄附などにご支援いただきました皆様に感謝いたします。
生物システム応用科学府 生物機能システム科学専攻 1年 村田 光陽
私は、次世代食料・飼料源として注目されるコオロギを材料に研究をしています。
今年度、八重山諸島以南にのみ分布するネッタイマダラスズという小型のコオロギのミトコンドリアDNAを得て、系統解析する必要があったため、石垣島への旅費を本奨学金で賄わせていただきました。コオロギの系統解析に関する論文の自身第一報は今年度に受理・公開されましたが、この石垣島での採集旅行のおかげで、続報を投稿することができそうです。
さらに、「昆虫を食の選択肢の一つに」を目標に、昆虫食のアウトリーチ活動にも力を入れており、日頃、さまざまな昆虫料理を試作し、紹介しています。優れた食味の昆虫料理を開発するには既存の昆虫料理を試食する必要があります。昆虫食の試食にも本奨学金を使わせていただきました。特に、昆虫食の本場東南アジアのカンボジア出張の際に、露店で売られていた食用昆虫を購入しました。食べたことのない味付けでしたが、とても美味で、その秘密はスパイスにあると気づきました。そこで、食用昆虫に独特の風味を生かす、あるいは臭みを消す効果を持つスパイスを、本奨学金で複数購入させていただきました。これらスパイスと昆虫を用いた料理のアイデアを出し、2024年3月9-10日に代々木公園で開催される食フェス(タイミュージック グラミーアワードフェス)への出店に生かします。少しでも多くの方に昆虫食の魅力が伝わることを願っています。
このように、博士学生にとって非常に重要な論文執筆や、昆虫食の社会受容性を上げるための活動に本奨学金を使わせていただいきました。アカデミアおよび社会実装の両方で活動が促進され、これからの学生生活およびそれ以降の人生に大きく影響を与えました。誠にありがとうございました。
生物システム応用科学府共同先進健康科学専攻(博士課程)1年 唐牛 健杜
私は治療薬に対する抵抗性を獲得して悪性化した前立腺癌が骨転移するメカニズムを解明するため、研究を行っています。将来は博士課程で得られた研究成果を発展させ、前立腺癌の新たな治療薬開発を目標としています。
前立腺癌は西欧諸国に患者が多く、西欧諸国での研究が盛んです。私は海外留学を通じて高度な研究力を獲得し、前立腺癌という病気に対する知見を深めたいと考えています。海外留学において語学力は必須のため、ご支援くださった奨学金を活用し、現在英会話教室に通っています。日常的に英語を話すことが習慣化し、少しずつ語学力を高められていることを実感しています。
今後も国際的に活躍できる博士人材に成長し、社会に研究成果を還元できるよう努力していく所存です。ご支援くださった全ての方々に心より御礼申し上げます。
博士奨励奨学金
本学修士課程を修了し、本学の基本理念を担う優秀な博士課程の学生に奨学金を支給しました。
※学生の所属・学年は支給時のものです。
工学府電子情報工学専攻(博士後期課程)1年 三木 司
この度は、博士奨励奨学金の受給が決定し、大変嬉しく思います。本奨学金の給付にあたり寄附してくださった全ての支援者の方々に、ここに謝意を表します。
私は現在、「量子計算機とナノスケールデバイスの融合」というテーマを掲げて研究に励んでおります。今後更なる業績を挙げるためには、研究活動に従事するための学費・生活費を確保することが急務でした。今回、本奨学金を受給できることで、かなり生活に余裕ができアルバイトを減らすことができます。そうすれば、研究に従事する時間も増えることと予想しております。これにより生まれた時間を使って、今後は多くの国内会議・国際会議で発表を重ね、さらには学術論文の執筆に取り組みたいと考えております。
今回本奨学金を受給させていただき、支援者の方には厚く御礼申し上げます。支援者の方が「寄附した甲斐があった」と感じるような成果を挙げられるよう、今後より一層、研究活動に尽力して参る所存です。
連合農学研究科環境資源共生科学専攻1年 堀川 翔子
私は木材保存の分野に科学の力で貢献するという目標を掲げ、日々研究に取り組んでいます。高校生の頃から日本文化、特に木造文化財に興味を持っていました。大学の講義で木造保存学という研究分野があることを知り、木造建築物をはじめとする木造文化財の保存に科学の力で貢献できるということに強く興味を惹かれ、現在は木材を腐朽させる微生物(木材腐朽菌)に関する研究を行っています。木材腐朽菌が木材を腐らせるメカニズムを解明することで、そのメカニズムに基づいた木材保存法を開発できると考えています。これは木造文化財だけでなく、私たちにとって身近な木造住宅にも適用することのできる技術の開発につながると考えています。このように木材腐朽菌の研究を通して、社会に貢献できる研究者になれるよう励んでまいります。奨学金は研究に必要な専門書の購入等に充てさせていただきます。
皆様からのご支援のおかげで、私は研究に全力を注ぐことができます。ご支援いただいた全ての方にお礼申し上げます。今後も目標に向かって精進してまいります。
農学府共同獣医学専攻博士課程 1 年 大澤 南菜子
近年の健康志向の高まりにともないペットでも腸内環境を整えるため、健康食品の一つである乳酸菌産生物質を与える飼い主が増えています。20 世紀後半にかけて腸内細菌叢の形成ならびに疾患との関連性についての多数の研究が行われ、腸内免
疫の活性化は注目の分野となっています。現在私は博士課程で、乳酸菌産生物質および乳酸菌がイヌ及びネコの腸管免疫に及ぼす影響について研究を進めております。
将来的には免疫力向上へ付与するような乳酸菌製剤の機能性を多く見出し臨床現場に活かしたいと強く思っているため、研究を続ける上で奨励奨学金を支給していただけることは非常にありがたいお話でした。やはり研究と費用は切っても切れないため、奨励奨学金の支給は心理的な負担の解消にもつながりました。新たに博士課程へ進学し研究者として踏み出す方々のためにも、この奨学金の継続をお願い申し上げます。私も支援された者として、研究に邁進し成果を出すことで今後も協力していけたらと考えております。
工学府電子情報工学専攻博士後期課程 1 年 小田切 雅樹
東京農工大学基金への皆さまからのたくさんの温かいご支援を賜りましたおかげで、このたび博士奨励奨学金を受給させていただくことができました。私は物理が大好きで特に光学に興味を持ち、幼いころからの夢である研究者となるため、奨学金のご支援をいただき博士後期課程へ進学いたしました。給付いただいた奨学金は研究で必要なレーザーダイオードや光学装置の購入にあてさせていただこうと考えています。私は研究を通じて、未知の光の現象について、様々な実験をして解明していきたいという志をもっています。実験での測定は一筋縄ではいかないことも多々ありますが、先生や実験チーム全員の知識や経験を総動員して工夫を凝らし、なんとか実験を成功させ達成感を得るという研究の楽しさを身にしみております。
最後になりましたが、ご支援をくださった全ての方々に心より御礼申し上げます。立派な研究者として自立できるよう、今後も一層の努力を行ってまいります。